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ゴスロリっ娘遙たん


「や〜だ!」
 な、何だ? 玄関の向こうから聞こえてくるこの声は。
 ちょっと待て。この声って遙じゃないのか。
 俺は、今日が遙の誕生日だから、去年と同じように誕生日プレゼントを持って、彼女の家へとやって来た。
 その後は、いつものように映画館に行ったりとデートを楽しむ予定である。
 そして、インターフォンを押そうとしたところ、ドアの向こうから遙の声がしたのだ。
「こんな恥ずかしい服着れないよぉ〜! お願いだから脱がせてよ!」
「だーめ。お姉ちゃんは今日一日、この服を着てデートしないといけないんだから。ちゃんとデートして帰ってきたら、脱がせてあげる」
「もぉ〜! なんで、この紐、背中の届かない位置についてるの! 茜、早く紐ほどいてよ!」
「お姉ちゃんったら、ほっぺたを赤くしちゃって、かわいい」
 な、何か変な会話を聞いたような……
 とりあえず、この話は聞かなかったことにしておこう。
 俺は、何も見ていなかったという平然さを装ってインターフォンを押した。
「はーい、お兄ちゃんだね。ちょっと待っててね、今開けてくるから」
「茜、やめてよ。孝之くんに、こんな恥ずかしい服を着てるの見られたくないんだから」
 インターフォンの向こうから、茜ちゃんの声。続いて、遙の声も聞こえた。
 何なのだろうか。今日は自分の誕生日で、これから俺とデートをすることもわかっているはず。そして、恥ずかしい服となると……
 逆に、遙がどんな服を着ているのか興味が沸いてくるのが男の本能である。
 まさか、バニーちゃんとかメイドさんとか。いや、チャイナドレスって可能性もある。
 でも、そんなコスプレみたいな服を着てデートするとは考えられない。周りの視線もあるだろうし。
 そんな期待に胸を高鳴らせていると、玄関のドアが開いた。
 そこには、笑顔の茜ちゃんが顔だけを出して、俺のほうを見ている。
「フフフ、来たね、お兄ちゃん。今日のお姉ちゃんは一味違うよ」
 この状況を面白がっているように、妖しげな笑みを浮かべる茜ちゃん。さっきの遙の会話を思い出して、体中が興奮し始めていた。
「それじゃ、登場してもらいましょう。これがお姉ちゃんでーす」
 茜チャンに腕を無理矢理捕まれて、遙は玄関前に現れた。
「どう? お姉ちゃんかわいいでしょ?」



  「は、遙……」
 俺は目の前の遙を見て、唖然としてしまった。
 遙は全身を黒の衣服に身を包んでいて、所々白いレースやフリルやらがたくさんあって、それらがかわいらしくその服を着飾っている。
 驚いたのは、衣装のあちらこちらに無数に十字マークのようなものがついていて、それがまるで自分の存在を主張するかのように、自然と目に入ってくる。
 頭には小さいリボンを模ったヘッドドレスがちょこんと乗っていた。そこから伸びている紐は、顎の辺りで蝶々結びにしている。
 いわゆるゴスロリというやつだろうか。俺もテレビとかで見たことはある。
 やけに地味すぎるのに、どこか派手に見える服。いや、ビジュアルバンドの追っかけが着ているような不気味なコスプレ。
 そういうイメージがある服を遙は身につけていたのである。
 遙は顔を真っ赤に染めながら、時々俺と視線を合わせようとしたり、下を向いて俯いたりしている。
「ほら、お姉ちゃんも何か言わないと」
 茜ちゃんは、遙の肩にポンと手を置いた。ビクっとして、体を震わせる遙がかわいらしい。
「やっぱり、嫌。着替えてくる」
 そのまま、俺と視線も合わせずに家の中へと戻っていった。でも、すぐに戻ってきた。
「茜、お願いだから背中の紐をほどいてよ」
 そう言って、茜ちゃんに自分の背中を見せる。俺も一緒になって見てみると、クロス式に編みこまれたリボンのような紐が
背中の真ん中くらいで蝶々結びになっている。
 その紐はきつく結ばれているらしく、紐の隙間から見える遙の肌に少し喰いこんでいる。
 どうやら、遙は自分でこの服が脱げないということが俺にもわかった。
「お兄ちゃん、紐をほどいたらダメだからね。ほどくなら、お兄ちゃんの部屋だけにしてね。そして、今晩は……お姉ちゃんとお兄ちゃんがキャッ!」
 いたずらっぽい小悪魔な笑みを浮かべて、茜ちゃんは答えた。
「お姉ちゃん、せっかく春香さんが送ってきてくれたんだから、その気持ちを無駄にしちゃダメだよ」
「春香さん?」
 俺はその疑問を口にしていた。
「あれ? 乃木坂財閥のお嬢様なんだけど、お兄ちゃんひょっとして知らないの?」
「の、乃木坂財閥?」
 その名前なら俺も知ってる。三井、三菱、住友、安田の四大財閥と肩を並べるあの乃木坂財閥といえば、ニュース番組で有名だ。
 確か、噂ではそのお嬢様がオタクだとかいうのがあるけど、本当なのかはわからない。
 でも、このゴスロリをそのお嬢様が送ってきたということは、もしかして……
「この服、もしかして……」
「うん、お父さんがこの財閥と共同研究をしているという一環で親しくなって、私も美夏ちゃんと仲良くなっちゃってね。
お姉ちゃんの誕生日プレゼントとして、その姉妹から送ってきたのが、これなわけだよ。しかも、美夏ちゃんったら、『着せるなら寝てるときが一番だよ』なんて
手紙を添えてきてたから、早速実践したわけ。いや、まさか途中で起きずに全部着せることができるなんて思わなかったけど」
 そう言うと、今度は携帯を恥ずかしがっている遙に向けた。そして、フラッシュが光る。
「よし、これで恥ずかしがっているお姉ちゃんの写真をゲット! 後で美夏ちゃんに送っておこ」
「ちょ、ちょっと辞めてよ」
 茜ちゃんにいじられる遙を見て、改めて「誕生日おめでとう」と心の中でつぶやいた。     

 コメント

「みんな、私を見てるよ。恥ずかしいよ、孝之くん」
「いや、俺も恥ずかしいんだけど」
 普段は見ないフリフリのゴスロリなんて、嫌でも人目につく。だから、早く近くの喫茶店にでも入ろうと考えていた。

  2009年遙聖誕祭として描いてみました。
  去年と同じくコメントの初っ端からSSでスタートしてみました。

  こういう後日談も考えていましたが、いいのが思い浮かばなかったのであとがきに載せることにしました。
  本当はゴスロリの遙たんをイラストに描いてみたのですが、完成が間に合わずにラフ画での公開になってしまいました。

  これの元ネタは今年の電撃大賞に投稿するネタから引用しています。
  最近、ゴスロリのラブコメを書こうとしているところだったので、こういうのもよさそうです。

  それでは、2○歳になった遙たんの誕生日を今年も祝いたいと思います。
  遙たん、2○歳の誕生日おめでとう。

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