SS一覧に戻る    君望TOPに戻る    TOPに戻る



いつか再会できる日を信じて……

※画像は、takaさんから頂きました。
 無断転載を禁止します。



「遙……遙……」
 体を揺らされながら、私を呼ぶ声。それは、まるで私に安らぎをもたらしてくれるような低い声だった。
 でも、それでいて私の大好きな声。
「遙!」
 さっきよりも大きい声に驚いた私は、そこで目を覚ました。
 顔を上げると、前で先生が絵本童話学の講義をしているのが目に入ってきた。
 ぼんやりとした頭を働かせて、今は大学の講義中だったことを思い出す。
 そうか、昨日はレポート提出で忙しかったから、知らない間に寝てしまったんだ。
 顔だけをわずかに動かして、周囲を見渡すと、私の近くには他の大学生が座っていなかった。
 よかった。私の寝顔を見られていなくて。
 講義前から寝てしまうかもしれないと思っていた私は、一番後ろの一番右端の席に陣取っていた。
 そして、まだ見渡していない周囲。窓が見える右側には、私の大好きな人がいた。
 孝之くん。
 その名前を言うだけで、私の胸が締めつけられそうになるほど、暖かくて不思議な気持ちになる。
 ほわほわとするような、そんな感覚。
 さっき、私を起こしに来てくれたのは、恋人の孝之くん、その人だった。
 他の人には、私の寝顔は見られたくないけど、彼だけは別。私の全てを知ってほしいという意味もあって、彼に私の寝顔を見られたことは、かなり嬉しいものでもある。
「ごめん、孝之くん。疲れて眠ってしまったみたい」
「大丈夫か?」
「うん、少し眠ったら気分がだいぶよくなったよ」
 いつも、こうして私を心配してくれる。その優しさを感じられるだけで、私は胸がいっぱいになるほど幸せだった。
 昨日は、私が在籍している児童心理学科のレポートを書いていて、実はほとんど寝ていない。
 フロイトが提唱した幼児が人格を形成していく精神分析理論やらエディプス・コンプレックスにおける過程をまとめたレポートなんだけど、そんなこと孝之くんに言ってもわからないだろうから、私は黙って前を向き、講義に集中していた。


 私は、去年の春に第一志望だった白稜大学に合格することができた。
 もちろん、私の大好きな孝之くんも一緒に。
 将来絵本作家になるために、以前から児童心理学を学んでみたかったので、私は心理学部の児童心理学科に、孝之くんは文学部の日本文学科に合格した。
 私が合格した学科の卒業生は、児童心理カウンセラーや絵本作家になっている人が大勢いる。これでまた、将来の夢に大きく一歩前進することができた。
 でも、その一歩を踏み出すまでの道のりは、決して甘くはなく、むしろ長かったと思う。
 私は高校生の頃、恋人の孝之くんとデートに行く途中で事故に遭い、三年間昏睡状態になっていた。
 目覚めたのが、今から一年半前。
 そして、病院から退院した後は、週に一回の定期健診に通いながら、これまで三年間の遅れを取り戻すかのように受験勉強に没頭した。もちろん、側には孝之くんがいつもいてくれて、わからない問題を一緒に解いたりもして、なんとか二人一緒に合格することができた。
 それから一年が経ち、現在、私たちは大学二年生である。
 私は事故から復帰した後の第二の人生として、孝之くんという心から愛せる人、そして大学生の地位という二つの物を手に入れることができた。
 だけど、こういうのを等価交換というのか、同時に失った物も二つある。
 まずは三年間という時間。
『失った時間は同じ時間をかけてゆっくりと取り戻していけばいい。ずっと一緒だから、ゆっくり行こう』
 病院から退院したとき孝之くんは、私にそう言ってくれた。
 だから大学生になった今は、私たちは同じ時間の中をゆっくりと歩いている。普通の人と比べると三年遅れているかもしれないけど、孝之くんと一緒にいる今は、そんな遅れも平気なくらいに充実した日々を過ごしていた。
 失った三年間という時間は、お金では買えないし、二度と戻ってはこないけど、取り戻すことはできるからそんなに気にはならない。
 問題は、もうひとつ失った水月という大事な友人の存在だった。
 私が事故に遭ったのは、約束のデートの時間に遅れたせいだと思っていた孝之くん。
 そして、そのデートの時間に遅れた直接の理由は、その日が誕生日だから、プレゼントを選んで欲しいと言って無理矢理引きとめた水月がいたからだ。
 やがてこの二人は、私が事故に遭ったのは自分のせいだという共通の考えを持つことになって、その結果、お互いの傷を埋めるかのように、付き合い始めることになる。
 だけど、私が目覚めてからは、孝之くんは以前のように私を選んでくれた。
 そのことは嬉しかったけど、私が眠っていた三年の間、孝之くんを支えてくれた水月は、私たちの前からいなくなってしまった。
 もちろん、いなくなった理由は、孝之くんを忘れるためであることは知っている。
 水月も私と同じように孝之くんを愛していた。でも、孝之くんが選んだのは私。それでも、水月は孝之くんのことを諦め切れない。こうして、水月が出した結論は、この町を出て行くことだった。
 最初に知ったのは、私が病院から退院した日。あまりにも突然のことなので驚いた。
 でも、私は確信している。いつか必ず水月に会えるということを。
『人はね、誰も傷つけずに生きて行くなんてできないのよ。けど、結果を急いじゃだめ。時間しか解決してくれないことがあるんだから』
 だから、時間は残酷だけど時に優しい。
 退院間際に、水月のことを教えてくれた私の担当医の先生が言っていたことを思い出す。
 私が眠っていた三年間は、水月や孝之くんを子供の考えから大人の考えへと変えていたのである。
 「いつまでも私たちは、友達だよ」という子供の考えを持った私と、「もう一緒にはいられない」という大人の考えを持った水月。
 でも、それは時間が自然に解決してくれるものだと思っている。
 ほとぼりが冷めたら、きっと私たちの前に姿を見せてくれるはずだ。
 その日に備えて、私は大学に入ってから一生懸命勉強した。昨日、徹夜でレポートを仕上げたのもそういう理由が絡んでいるからである。
 「ゆっくり行こう」と言ってくれた孝之くんに反する行為だけど、今もこの青空の下で、水月は何かをして頑張っているはず。
 だから、再会したときに水月はきっと立派な人間になっていると思うのだ。そのときに、私がだらしなくしていたら、きっと水月は幻滅してしまう。孝之くんは、苦渋の決断をして私を選んでくれたんだから、それに見合った人間になろうと思うことにしたのだ。
 水月に負けないように、私も絵本作家になる夢を実現させるために、これだけ頑張ったんだということを、つまり再会しても恥ずかしくない人間になろうと思っていた。
 それが、水月を傷つけた私にできる精一杯の償いだと思う。
『友達を大切に出来ない人は誰も大切にできないのよ。そしてね、友達を大切にされたことを喜べない人は、なにも喜べない。 水月は大切な……私たちにとって……、誰よりも大切な……友達でしょ……だから……がまんしないで。その涙は水月が大切な仲間であることの証だよ』
 退院したとき、私が孝之くんに言った言葉。
 私は水月を傷つけたけど、水月は私のことを大切に思っていることは確信できる。
 だから、私も水月のことを大切に思っているし、今でも大事な親友だと思っている。
 子供っぽい考えだと思うかもしれないけど、この考えだけは譲れない。
 それに水月は孝之くんにちゃんと言ってくれた。
『孝之……約束……いつか守ります』
 孝之くんの携帯に入っているこの水月の声。水月が言ったこの約束というのは、いつかまた会うこと。
 その約束が果たせるのは、何年後になるのかはわからない。
 事故で昏睡状態になった私が目覚めるのを水月が待ち続けたように、今度は逆に私が水月を待ち続けている。
 そして、私が目覚めたように、いつかその日が来ることを信じている。
 私が水月に再会したら、笑顔でちゃんと言うつもりだ。
 「おかえりなさい」という言葉を。


 「いつか再会できる日を信じて……」


 私が今受けている講義は、選択講義といわれているもので、白稜大学の全学部の人が受けられるものである。だから、こうして学部の違う孝之くんとも、一緒に講義を受けることができる。
 講義の内容は絵本童話学。将来、絵本を書くときに役に立ちそうだから講義を受けてみたけど、すごく面白かったから、毎週こうして足を運んでいる。孝之くんは、私と一緒にいたいという動機だけで、この科目を選択したみたいだけど、それだけの単純な理由でも、正直に嬉しかった。
 でも、最初の講義を受けて、孝之くんは少し後悔したみたいだった。だって、絵本童話学という科目だから、受講するのはほとんどが、私たちのような女子が多い。男の子でこの講義を受けているのは、孝之くんくらいしかいないと思えるほど、女の子が多い科目だった。
 講義の内容は、絵本や童話ができた経緯、絵本や童話を通じて子供に何を伝えようとしているのかなどもあれば、有名な絵本作家や童話作家を取り上げて、その作家の人生を徹底的に調べ上げた結果、どういう理由でその絵本や童話を書くことになったのかといったことまでもある。
 どちらかというと、児童心理学というよりは、児童文学といった講義だった。
 講義に集中していると、横からそっと一枚のルーズリーフが私に差し出された。もちろん、そのようなことをするのは、隣に座っている孝之くんしかいない。
 そこに書いているのは、メモの走り書きのような文字。
 どうやら私が眠っている間に、教授が黒板に書いたのを移してくれていたようである。
 私は、孝之くんのほうを向いて微笑むことで感謝を示した。
 でも孝之くんは、指でルーズリーフのほうを指し示している。ルーズリーフのほうを見てということなんだろう。
 言われたとおりにルーズリーフに目をやると『マヤウルのおくりもの アン・マーガレット・ソウヤー(Ann・Margaret・Sawyer)』とある。
 私は、これを見て驚いた。まさか、私の知っている絵本作家が講義で出るなんて……
 私と孝之くんが最初に顔を合わせたのは、この「マヤウルのおくりもの」が置かれている本屋だった。
 アンの優しさを感じる繊細なタッチで描かれた絵と、マヤウルという妖精を通じて描く子供との交流の場面が何より好きな部分である。
 でも、マヤウルはお別れの妖精。大きくなった少女にマヤウルは「さよなら」という言葉を教えたことで、人々の間に「さよなら」という言葉がが広まっていくという、ある意味少し悲しい絵本でもある。
 もしかして、孝之くんが私を起こしたのって、このマヤウルが講義に出てるから?
 そうだとしたら、なおさら孝之くんに感謝しないといけない。
 講義では、ちょうど作者のアンの生い立ちが話されていたところだった。アンがどういう気持ちでこの絵本を書いたのか、私自身もとっても興味があったことなので、教授の話にしばらく耳を傾けていた。


 私はハンカチを抑えて、瞳から滲み出てくる涙を拭いていた。
 講義終了後、私は鼻をぐすっと鳴らしながら、泣いて赤くなった顔を隠すようにハンカチを目に当てる。
 孝之くんも私が泣いていることを悟ったのか、何も話そうとはしなかった。
 他の人は、いつものように部屋から出たり入ったりを繰り返している。
 そんな中で、たぶんアンの生い立ちを聞いて泣いているのは私ぐらいだと思う。
 知らなかった。アンがこんな気持ちで『マヤウルのおくりもの』を書いていたなんて……


 アン・マーガレット・ソウヤー。本名アン・ソウヤー。
 1956年にソウヤー家の長女として生まれる。
 父はイギリス人、母親はドイツ人で、アンは西ベルリンで少女時代を過ごしていた。
 アンには当時、東ベルリン側に住んでいた大好きなおばあちゃんがいて、そのおばあちゃんに週末に一度会うのが何よりの楽しみだった。
 でも、アンが5歳になったときの1961年8月13日の日曜日に事件が起こった。
 東ベルリン側の政府が、西ベルリンへの逃亡を防ぐために、ベルリンの壁を建設した。
 これによって、アンは大好きなおばあちゃんと会うこともできなくなってしまう。
 もし、おばあちゃんに会いに、東ベルリンに行ってしまうと、そこで監視している兵士に撃ち殺されるか、二度と自分の家族に会えないという危険性が伴っていた。
 アンは、大好きなおばあちゃんと引き裂かれたこの日のことを生涯忘れないと、後に絵本雑誌のインタビューで答えている。
 後に、アメリカに渡ったアンは、二十歳で絵本作家としてデビューした。
 そして、1989年11月9日にベルリンの壁は崩壊。アンはこのとき、33歳になっていた。
 このことを知ったアンは大喜びをして、ベルリンの壁が完全に撤去された三ヶ月後に、東ドイツ側にある旧東ベルリンに入国。
 もちろん、大好きなおばあちゃんに会いに行くためである。
 しかし、おばあちゃんは既に8年前に病気で亡くなっていた。
 このことにひどくショックを受け、「冷戦の理不尽なエゴが、私の大好きだった人間を殺した!」と東ドイツを批判。
 それから、アンはこのことを題材にした絵本を創作した。それが「マヤウルのおくりもの」だった。
 このときから、アンは、アン・ソウヤーではなく、アン・マーガレット・ソウヤーとミドルネームをつけた名前を名乗った。
 マーガレットというのは、大好きだったおばあちゃんの名前。ミドルネームに使うことで、アンは大好きなおばあちゃんと一緒にいる気持ちになろうと考えていた。
 もう二度と自分のような悲しい犠牲者を出さないために作ったのではないかと、教授は結論づけていた。


 絵本というのは、子供に何かを教えるためにあると絵本童話学の最初の講義で習った。
 ストーリーを通じて、子供の教育として何が大切なのかを教え、子供に常識を身につけさせるために存在するのが絵本である。
 だから、絵本には必ずテーマがあって、読み終えると何を子供に教えようとしているのかがわかるようになっている。
 「マヤウルのおくりもの」で例えると、最初は、少女とマヤウルの出会いから始まる。つまり、少女が小さい頃のアンで、マヤウルが大好きだったおばあちゃんである。
 最初は、他の子供たちは一緒になってマヤウルと遊ぶけど、子供が大きくなるにつれて、だんだんとマヤウルと遊ばなくなり、ついに子供たちはマヤウルから離れていってしまった。これが、ベルリンの壁で離れ離れになったことを表している。
 そして、少女は大人になり、久しぶりにマヤウルに会いに行く。これがベルリンの壁が崩壊して、大好きだったおばあちゃんに会いに行くところである。
 でも、マヤウルはもう遊べないことを告げて、代わりに「さよなら」という言葉を少女に教える。少女はそれを使い始めるうちに、人々の間に浸透し、やがて別れるときに「さよなら」というようになっていった。
 これで、アンが伝えたかったことは「さよなら」という言葉が生まれた経緯ではなく、もし、明日会えると分かっていても、その相手が事故に遭ってもう二度と会えなくなるかもしれない。軽くバイバイしたはずなのに、それが最後の別れになることだってある。
 だから、「さよなら」の意味をもっと考えて欲しいという想いからこの絵本を創作した。アンはおばあちゃんと軽くバイバイしたのに、それが最後の別れになってしまった。
 あのときに、ちゃんと正式に「さよなら」をしていたら、まだだいぶマシになっていたかもしれない。
 世の中には、「さよなら」を言いたくても言えない相手がいる。
 本当に別れる相手、つまりもう二度と会うことのない相手には、ちゃんとした「さよなら」をして、ちゃんとした別れをしてあげようという意味がこの絵本には、込められている。
 それは、私と水月の関係においても同じこと。
 病院から退院したあのときに、私は水月とは会っていないし、電話もしていないので、ちゃんと水月にさよならしたわけではない。
 つまり、水月とはまだ別れたわけではないけど、もしかしたら、水月はもうこの世に存在しないということも充分考えられる。もちろん、そんなことはあるはずないと思っているけど、もし、そうだとしたら、私はひどく泣き崩れていたはずだ。
 ちゃんとさよならしていて、こういう状況になったとしても、同じように泣くことに変わりはないけど、さよならするかしないかで、私が感じる悲しみの度合いがかなり違ってくる。
 水月、今頃どうしているのかな?
 ハンカチを当てながら、私はそういう不安を感じつつも、水月のことを考えていた。


 講義が終了したこともあって私は、孝之君の自宅に来ていた。
 最近は、孝之くんと一緒に帰って、そこで夕食を作ってから、家に帰ることが日課となっていた。
 私がそうしたのは、水月が孝之くんに同じことをやっていたからである。
 料理なんて全くしたことがなかったので、最初はクッキングブックを見ながら作っていた。
 それからは、お母さんとかに教えてもらったこともあって、少しずつではあるけど、上手に作れるようになってきた。だから、最近は夕食を作るのが楽しい。
 水月もこんな想いで、孝之くんにごはんを作ってあげてたのかなと思うと、三年間孝之くんを独占していた水月がだんだんと羨ましくなっていた。
 最初は、私も水月と同じことができるだろうかと不安だった。
 でも、私は水月の代わりじゃないから、いつもの自分でいようとすぐに考え方を改めることにした。
 今はすぐに慣れてきたこともあって、いつものように二人分の夕食をテーブルの上に置いてから、マグカップにお茶を入れる。
 このマグカップは、孝之くんとお揃いの柄で、取っ手の部分がタコになっている。
 そして、孝之くんの家には、取っ手の部分がイルカになったマグカップがもう二つある。
 私が昏睡状態になっていたときに、孝之くんを元気付けようと思った水月は水族館に誘った。そのときに、そこの売店で買ったものらしい。水月はイルカのマグカップを使って、孝之くんはタコのマグカップを使っていて……そして、水月と別れてからも孝之くんはそのマグカップを捨てられずにいた。
 私がそのことを知ったのは、孝之くんの家に初めて来たときだった。確かそのときは受験勉強中で、涙ながらに孝之くんはそのことを 打ち明けてくれた。やっぱり、孝之くんもまだ水月の未練が残っていたんだと思う。
 孝之くんは、あのマグカップをもう二つ足そうと提案してきた。私と孝之くん、水月、そして孝之くんの友達の平くんを入れた四人がずっと仲間だという証として……
 私は静かにその案に賛成して、早速、受験の気分転換に誘ったデート先は水族館だった。そこで、イルカとタコのマグカップをそれぞれ買った。
 私は孝之くんとお揃いのタコのマグカップを使うことにした。だからイルカのマグカップの一つは、使われることもなく、今はひっそり戸棚の中で出番を待っている状態である。
 そんなことを考えていると、玄関のドアがノックされた。珍しい来客である。
「私、出てくるね」
 エプロンをつけたまま、玄関に向かった。まるで、新婚の夫婦みたいで少し恥ずかしい。
 ドアを開けると、そこに立っていたのは平くんだった。仕事帰りなのかスーツ姿で、手にはビジネスバッグと店で買ったビニール袋をいくつかぶら下げている。
 平くんは、今年の春に大学を卒業して、今は平くんのお父さんが経営している法律事務所で働いている。
「涼宮、まるで新婚さんみたいだな。孝之いるか?」
「う、うん、いるよ」
 ちょっと顔を赤くしながらも、私は応えた。
「じゃあ、ちょっと上がらせてもらうぞ。ビール買ってきたから一緒に飲もうと思ってな」
 私は、平くんの後に続いて家の中に入っていった。


「ったく、毎日毎日雑用でやってられっかよ! しかも、同時に法律の勉強もしないといけないんだしさー。何が債務不履行だ、何が債務不払いだ! 瑕疵ある行為の主権者なんか知るか!」
 平くんは、ビールを飲み始めると早々に愚痴り始めた。仕事で嫌なことがあったのか、愚痴を聞いてもらいたくて来たようである。
 夕食を食べている最中の孝之くんは、適当になだめながらも、少し困っているようだった。
 私は、イルカのマグカップにウーロン茶を注いだ。もちろん、これは平くん専用のマグカップである。
 私の向かいに孝之くんが座り、その右隣に平くんが座っている。それを見て、私は戸棚に行き、もうひとつのイルカのマグカップを取り出して、平くんの向かいに静かに置いた。
「遙、それ……」
「せっかく、平くんが来たんだから、仲間はずれだと寂しいと思って……」
 私たちは四人で仲間。いつもこうやって、たわいもない話で盛り上がったりできる生涯の友達ともいえる存在。
 でも、今は三人しかいない。一人欠けた今の私たちは本当の仲間とは呼べなかった。だから、少しでも穴を埋めたくて水月の形見ともいえるイルカのマグカップを持ってきてしまった。でも、その主はいつ現れるのかわからない。それが私にとって悲しいものだった。
「あ、そうだ。文学部の掲示板でこんなのがあったんだよ」
 孝之くんは、話題を逸らそうとしたのか、平くんの愚痴から逃れたかったのか、バッグの中から一枚のプリントを出した。
「絵本コンクール?」
 平くんが呟いたのを聞いて、私は興味を持ってその紙を見つめた。
 一ヶ月後に行われる大学の文学部主催の絵本コンクールで、優秀賞は幼稚園や施設に寄贈されるというものらしい。
「おもしろそうだな、涼宮、出してみたらどうだ?」
「え? で、でも……」
「就職したら自分の時間というものがなくなるんだよ。時間がたっぷりある今を有効に使わないと後で後悔するよ。これ、俺から後輩の君たちに送るアドバイス」
 平くんは酔っているせいか、勢いで言っているようだった。困った私は孝之くんのほうを見つめる。
「何事も経験だと思って、出してみたらいいと思うよ。絵本作家になるのが遙の夢なんだったら、なおさら」
 私はどうしたらいいのかわからずに、そのまま俯いてしまった。というのも、私が入学した児童心理学科は、子供の心理を教えるところで、まだ基礎的なことしか知らない。その知識を活かした上で、絵本なんて書けるはずがなかった。
「応援してるぞ! 賞を取ったら俺の事務所のところにも置かせてくれよな! 子供のお守りもさせられるから大変なんだよ!」
「今日、マヤウルのおくりものの作者のことで泣いてただろ。そこに、何かヒントがあると思うよ」
 孝之くんの言葉で、私は今日講義であったマヤウルの作者のことを考えていた。
 ちゃんとさよならできなかったおばあちゃんのこととを思って書いたアン。
 そのことと水月のことが私には重なって見えていた。
 思わず、ぽつんと置かれている水月のマグカップに目が行った。
 水月……私たちはずっと仲間だよね。
 仲間……
 そのときに、私にはひとつのアイディアが思い浮かんだ。
 アンは自分の経験を通して、マヤウルのおくりものを書いた。だから、私も自分の経験を通して、水月のことを、仲間は大切だというお話を作ってみようと考えた。
 それが絵本の基礎にもなっている、子供に何かを教えるという意味にもつながってくる。
「孝之くん、ありがとう。私やってみるよ」
 私は立ち上がると、孝之くんに静かに微笑んだ。


「ああ、あんなこと言うんじゃなかった」
 後片付けを済ませて家に帰ると早速、私は絵本の製作に取り掛かることにした。
 まずはプロット、いわゆる絵本の設計図のようなものを書こうと思ったけど、なかなかいい物が浮かんでこない。
 アイディアが思いついたから書けると思ったけど、実際に書くのは難しいことを痛感していた。
 気を取り直して、何か別なことで気分転換をしよう。
 ペンネームを考えるほうに思考を転換させる。
 やっぱり、涼宮遙と本名で出すのは恥ずかしいし、それに絵本コンクールには、合作、ペンネーム応募可と書いてあった。
 私の名前の遙というのは使いたかったから、まずはノートで「はるか」とひらがなで書いてみる。
 苗字は、仲間のことを絵本に書くんだから、四人の名前から一字ずつ取ったような感じのにしたい。
 あのアンも、ミドルネームにおばあちゃんの名前を使っているのだから、私も名前でメッセージを伝えられるようなものを考えてみることにしていた。
 みたはた……はしすな……あまりぱっとしない。
 思い切って、なるみと書いてみた。「なるみはるか」となっているのを見て、自分の鼓動がだんだんと早くなってくる。  私も将来はこういう名前に……いや、この苗字はもちろん却下だ。
 そのときに、なるみのなるを消して、そこに、はるかのかをつけてみた。「かみはるか」。そして平くんのらをつけて、「らかみはるか」。
 いけるかもしれない。
 でも、残る水月の一字をつけ足してもいい名前には……ならなかった。
 もう一回最初から考え直しだと思ったときに、水月は今はいないというフレーズが頭によみがえった。
 いない。無。それを苗字に付け足すと「むらかみはるか」。
 うん、語呂もいいし、これで行こう。
 あとはストーリーである。自分の本棚にある絵本をいくつか選んで、参考になりそうな文章やストーリーを何個か抜き出していく。
 そして、突然思いついたアイディアをノートに書き込んでいく。
 そういうことを繰り返して、最初は何もなかった物でも、少しずつ形のある物へと仕上がっていった。
 絵を描くのには、おこじょという動物を使ってみた。
 私はおこじょが大好きで、ぬいぐるみもいくつか部屋に飾ってある。そのぬいぐるみでポーズをいくつか作り、その様子を絵として描いていく。
 そのような試行錯誤を行い、二週間後に絵本が完成した。


「あの、孝之くん?」
 私が作ったサンドイッチの入ったバスケットを持ちながら、私たちはキャンバス内のベンチに座っていた。そして、隣にいる孝之くんに話しかける。
「何?」
「あのね、その……絵本作ってみたの」
 孝之くんは、最初私が何を言っているのかよくわからないのか、しばらく無言だった。
「おめでとう!」
 やがて孝之くんから、このような労いの言葉を聞いて、私は正直嬉しかった。でも、まだ安心してはいけなかった。
「それでね、読んで感想を聞かせて欲しいんだけど……」
「俺に?」
「うん、だって、孝之くんには、私の最初の読者になって欲しいから……」
 私はバッグからまだ試作品段階の絵本を取り出し、それを孝之くんに渡した。やっぱり、自分の作った物を人に見せるのは恥ずかしいせいか、渡すときに手がわずかに震えていた。
「ありがとう。読んでみるよ」
 鼓動や脈を打つ回数がどんどん早くなっていく中、孝之くんは興味津々に絵本の最初のページを開いていた。
 私は今すぐにでもこの場から逃げたいたいような羞恥心をぐっとこらえながら、神に祈るように両手を組み合わせていた。私は、今が昼食時という時間も忘れるほど、孝之くんの様子を見つめて続けている。
 次々とページをめくっていく孝之くんの顔がだんだんと険しくなっていくのを感じていた。表情もどこか真剣である。今、孝之くんはどういうことを考えながら私の絵本を見ているのか、その答えを聞くのが怖い。
「これって……」
 中盤まで読み進めた孝之くんは、突然声を挙げた。絵本をそっと覗いてみると、意見が対立したおこじょの一人が怒って帰ってしまうシーンのところ。
 やっぱり、孝之くんは私がどういう想いでこの絵本を書いたのか、わかっているようだった。孝之くんは、それ以降は口も開かずに黙々とページをめくっている。
 大学には、多くの人がいるのにも関わらず、まるで私たち二人の間だけは、時間が止まってしまったかのような冷え切った空気が周りを包み込んでいた。
 やがて孝之くんは、一息つくと静かに絵本を閉じた。
 私の緊張は一気に頂点へと達していた。
「すごくよかったよ」
「あ……」
 私は、孝之くんを静かに見つめて微笑み、同時に安心のため息をついた。
 よかった。孝之くんがいいって言ってくれて。
「でも、この絵本のストーリーってもしかして……」
「うん、そうだよ。水月に会いたいっていう私の気持ちを素直に絵本にしてみたの」
「俺も遙と同じだよ。遙がこの絵本に書いているように、水月に会いたいって思ってる」
 孝之くんは、私の意図をよくわかってくれたみたいだった。
「どこで何をしているのかわからないけど、水月が仲間であることに変わりはないよ。俺たちは四人でひとつなんだから」
 四人でひとつ。
 この言葉を聞いて、私の中にある水月に会いたいっていう想いがだんだんと強くなっていった。
「水月……」
 私の瞳には、いつの間にか涙がたまっている。
「孝之くん……」
 無意識のうちに、私は孝之くんの胸に飛び込んでいた。
「水月に会いたい。会いたいよ……」
 決壊したダムのように涙が溢れ、私は子供のように孝之くんの胸で泣いていた。


 絵本をコンクールに出して三ヶ月が経った。
 私たちはいつもと変わらない毎日を過ごしていた。
 講義のある日に出席して、レポートを書いて、夕方になれば孝之くんの部屋に行って夕食を作り、そして一緒に食べる。
 そんな当たり前の毎日が幸せだった。
 季節は春から夏へと移り変わり、私にとっては孝之くんと過ごす三回目の夏がやってきた。
 今は大学の前期試験も終わって、二ヶ月もある夏休みを迎えている。
 だから、私は毎日のように孝之くんとデートを重ねていた。
 でも、心はどこか満たされない。大好きな孝之くんといつも一緒にいることができて、幸せなのに疎外感のようなものを感じることが多くなっていた。
 平くんも仕事で忙しくなって、最近は会うことが少なくなってしまい、水月は……今も音信不通。
 そんなときに、やっぱり私たちは四人でひとつの存在なんだということを自覚してしまう。
「遙!」
 はっとして、私は気がついた。
 右手には箸を持っていて、目の前にあるのは肉じゃがの料理。
 それを見て私は、夕食を食べながら今の心にあるモヤモヤ感が何なのか考え込んでいたようだった。
「あ、ご、ごめんね」
 孝之くんも、私の気持ちを察したのか何も言わずにごはんを食べ続けている。
 私が昏睡状態のときも、孝之くんはこんな想いで私を待ち続けてくれたんだろうか。これからも、強い精神力を持って生きていかないといけない。そんな勇気が私にあるのか、そんなことはわからない。
 そういうことを考えていたときに電話の着信音が聞こえた。
 着信音は私が設定している曲ではない。
「孝之くんの携帯じゃない?」
 私がそう言うと、慌てて孝之くんはポケットから携帯を取り出した。
「はい」
 こんなこと悩んでいても仕方がない。携帯で応対している孝之くんの顔を見ながら、自分が作った夕食を食べて気分を落ち着けようと考えていた。
「え、水月が?」
 水月という言葉に、私は持っていた箸を思わず床に落としていた。
「よ、四人でか?」
 孝之くんは真剣な表情で聞いている。私も孝之くんから目を離さずに状況を見守っていた。
「それは……遙に聞いてみないとわからない」
 え、私に?
 どういうことなんだろうと思っていると、孝之くんは携帯を離して私に差し出す。携帯に出ろということらしい。
 緊張する手で携帯を受け取ると、静かに耳に当てる。もしかしたら、水月の声が聞けるかもしれないと思っていたこともあって、私の体はわずかに震えていた。
「も、もしもし」
「涼宮か?」
 聞こえてきたのは、平くんの声だった。
「う、うん」
「落ち着いて聞いてくれ。実はな、今日俺が働いている事務所に速瀬が来たんだ」
 震えている私とは違って、平くんの声はかなり落ち着いていた。
 そして、二年間行方不明だったもう一人の仲間の名前を聞いて、驚かずにはいられなかった。
「み、水月が?」
「ああ、そうだ。何かの手続きをやりに俺の事務所に来てたから、声をかけてみたら、速瀬は驚いていてな。ビンゴだったよ」
「そう……」
 私は、平くんから聞こえてくる声にどこか安心感を覚えていた。水月が元気にやっていそうだったからだ。
「それでさ、孝之にも言ったんだけど、今度俺たち四人で同窓会をしないか?」
「ど、同窓会?」
「ああ、速瀬のほうがそう言ってきたんだ。もう、孝之のことは吹っ切れたらしくて、そうしたら急に涼宮とも会いたくなったって言ってたよ」
 水月が、私に会いたい?
 私は水月の心を深く傷つけてしまった。だけど、私は水月を友達だと思っている。でも、心のどこかで水月に会うのを怖がっていたところもあった。もしかしたら、私は水月から憎まれているんじゃないかって、そう思えてきた。
 そして、今は水月が私に会いたがっている。水月は私のことを許してくれたんだって思うと急に涙が溢れてきた。
「それで、涼宮はどうする? 孝之に聞いたら涼宮に聞いてくれって言ってたからさ」
「も、もちろんだよ。私も、私も水月に会いたい……」
 嗚咽の混じった声で、自分の意思を平くんに告げる。
「そうか、それじゃ、8月15日の午後6時にあの丘に集合な」
「8月15日の午後6時に丘の上に集合?」
 孝之くんに知らせるために、わざと大声で日時と場所をオウム返しに聞き返す。すぐに孝之くんは立ち上がると、カレンダーにメモ書きをしていた。
「うん、遅れるなよって孝之に伝えといてくれ。まぁ、涼宮がいるから大丈夫だと思うけどな。それじゃ」
 電話が切れると、私は今までの緊張から解放されて、その場に座り込んで泣いていた。
 水月に会えると思うと、それだけで涙が次々と溢れてくるのを感じていた。


「ところで、どうして8月15日なんだろう? まだ2週間も先のことだし」
 私が気分を落ちついたのを見計らって孝之くんが尋ねてきた。
 孝之くんは忘れているかもしれないけど、私はなぜ水月がその日にしたのかを知っている。
「仲間記念日だからだよ」
 私はそう言って立ち上がると、孝之くんの机に立てている写真立てを取り、元の場所に戻った。
「ああ!」
 どうやら、孝之くんも写真を見て思い出してくれたようだ。
 今から五年前。四人で祭りに行こうって話になったときに、孝之くんは水月の悩み相談に付き合っていて、私と平くんはほったらかしにされてしまったことがある。
 その後、丘で合流したときに、一触即発の危機になりかけたけど、お互いの状況を許し合い、仲間として再認識した思い出の日ということで、私が名づけた記念日だ。
 その写真立ての中にある写真は、そのとき平くんが持っていたカメラで取ったものである。
「若かったな。あの頃の俺たち」
 孝之くんがぽつりとつぶやいた。
「そうだね」
 いつもなら、何気なく見ている写真でも、五年前と今を比べるとたくさんの違いがある。
 まず、みんなの顔つきが大人っぽくなったこと。そして、私の髪も今と比べて随分長くなっていること。五年前は肩まであった髪も、今は腰の辺りまで伸びている。
 退院したときはばっさり切ろうと思っていたけど、水月に会うまでは今の長い髪のままでいようと決めていた。再会したときに、すぐに私だとわかってもらえるように……
 水月もあの頃は長いポニーテールだったのに、退院する前に会ったときは長い髪をばっさりと切っていた。最初は驚いたけど、それは水泳を辞めたという証のようなものだと後で知った。
 あれから二年経って、水月は今どういう髪型をして、どういう顔になっているのだろう……
 私は、腰まで垂れ下がっている三つ編みのひとつを手で弄びながら、そのことを考えていた。
「仲間記念日って、俺たちが四人でいることのスタートを切った日なんだよな。あのときと同じ日に同じ場所で再スタートを切ろうってことなのか……」
 この写真を撮ってから、今までの五年間、いろんなことがあった。
 私が事故に遭って、四人の関係が崩れて、水月はいなくなって、そして私たちはバラバラになっていった。
 でも、四人が仲間でいる限り、またやり直すことはできる。お互いがお互いを認め合い、大切だと想っていれば、また前のような関係に戻ることはできる。
 私も孝之くんも、平くんも、そして水月も同じことを考えているはずだと、私はそう思っている。


「よいしょ、よいしょ、よいしょ。おこじょのハルは、きょうもいっしょうけんめいちいさいからだで、おおきなおかをのぼります」
 コンクールに出した冒頭のフレーズをつぶやきながら、私はおこじょのハルの気持ちになって丘を登っていた。
 今日は8月15日。時刻は午後6時前。
 夕方だというのに、あたりは昼間のように明るかった。
 今日は平日。お盆休み最終日でもある。水月が働いているのなら、時間に少し遅れるのかもしれない。
 でも、昨日は緊張してあまりよく眠れなかった。
 もし、水月に会ったら、最初にいう言葉は「おかえり」だと決めている。
 もう一度仲間として戻ってくる、その水月を暖かく出迎えようと考えていた。
「おこじょのハルは信じています。アキもフユユもしんじています。いつかかならずナッツがこのおかにかえってくることを。またよにんでなかよくあそんでおひるねすることを。ナッツは大切なともだち。わすれらないなかまなのです」
 絵本の最後の文章をつぶやきながら、私は今、絵本と同じように三人の仲間と丘の上を歩いている。
 孝之くんとは手をつないで。平くんは後ろにいて、セルフタイマーつきのカメラを持っている。私もコンクールに出した絵本を水月のプレゼントとしてバッグの中に入れている。私が絵本作家の夢に向かって進んでいることを知らせたいという、そういう思いからだった。
 この丘には、頂上に一本の大きな木が立っている。その木が見えてきたときに、近くに人影が見えた。
 最初はぼやけて見えていたものが、一歩一歩進むたびにだんだんとはっきりわかってくる。
 言うまでもなく、私が二年ぶりに会う仲間、そして私が会いたかった水月だった。
「水月!」
 私はたまらずに孝之くんの手を振り解いて、頂上を目指して走っていた。
 私の声で気づいた水月は、ただ驚いているようだ。
「水月! 会いたかったよ! ずっと、ずっと会いたかったよ! 水月!」
 私は水月に抱きついて、その胸の中でわんわんと泣いていた。



 水月は何も言わずに、黙って私を抱きしめてくれた。
 包容力があって、まるでお母さんに抱きしめられているような、そんな優しい気持ちが伝わってくるようだった。
「水月……おかえり……おかえり……」
 それ以上は言葉にならなかった。水月に会えたという喜びに浸りすぎていて、うまく言葉にできない。
「ただいま、遙。随分と待たせてごめんね」
 二年ぶりに聞くなつかしい水月の声。静かに、嗚咽を交えて話す水月の声に私は安らぎを感じていた。


「ところでさ、遙と孝之ってうまくやってるの?」
 しばらくして、お互い落ち着いてから水月が尋ねてきた。
「うん、水月がやったみたいに、毎日孝之くんの家に行って夕食を作ってね。それで、一緒に食べてるよ」
「そうか、うまくいってるんだ。私の分まで幸せになってね、遙」
「うん」
 そう言う水月は二年前に別れたときと同じ髪型で、そしてあの時と変わらない大人っぽい表情だった。
「私もね、恋人ができたんだ」
「ええ!」
 孝之くんと平くんが驚きの声を挙げる。
「ちょっと何よ。その驚きようは?」
 私も孝之くんや平くんと同じ気持ちだった。水月に好きな人ができたのは、私にとっても嬉しい。
「おめでとう、水月」
 友達として、仲間として、私は笑顔で祝福をする。
「もう、そんなに大きなことじゃないよ。私の恋人はね、今やってる仕事なの。二年前に引っ越した地で水泳のインストラクターを始めて、最近は高校の水泳部のコーチもやってるの。そうしたら、人に教えることがだんだんと楽しくなっちゃってね。今、大学行って体育教師になろうかなって、そんな夢を最近持つようになっちゃってさ」
「水月……」
 私の知らない間に、水月は以前よりひとまわりもふたまわりも成長しているように感じられた。もうやめたはずの水泳をまたやり始めて、そこから将来の夢を見つける水月の姿がどこかまぶしい。
「だからさ、遙。これもらってくれないかな?」
 水月はそう言うと、左の薬指にしている銀の指輪を指差した。
「これ……」
 この指輪のことも孝之くんから聞いていた。私が事故に遭った日に、自分の誕生日だからと孝之くんにおねだりしてもらったものである。そして、孝之くんのことが忘れられないという理由で、まだ指輪は水月が持ったままの状態になっていた。
「私の恋人はもう別の場所にあるの。だから、孝之に縛られていた証みたいなこの指輪はもういらないから、捨てる決心がようやくついてね。でも、もったいないから、孝之のことを大切にできる遙になら、あげてもいいかなって……だから……」
「水月……」
「指輪のサイズ9号だけど、大丈夫?」
「う、うん、大丈夫だと思う」
 薬指から少しずつ指輪が上のほうに上ってくるのを見て、私は確信していた。
 水月はもう大丈夫だということを。
 孝之くんのことを吹っ切って、今は孝之くんよりも大事な物を見つけたんだと思う。
 指輪は、完全に水月の指から離れた。まるで、孝之くんと水月を繋いでいたものが、消滅した瞬間を見ているようだった。
「孝之、これ孝之から遙に直接つけてあげて」
 水月の言う言葉に、恥ずかしさを感じられずにはいられなかった。
「ちょ、ちょっと水月……」
「いいじゃない、婚約指輪だと思えば」
「こ、婚約って、私はまだ……」
 私の非難を無視して、水月は既に孝之くんに指輪を手渡している。
 孝之くんがもっている指輪。孝之くんと水月を結びつけていたものが、今度は私の指に入ることになる。私はそのことに緊張するとともに、水月が今まで持っていた孝之くんの想いをしっかりと受け継ごうと心に決めていた。
「遙……」
 孝之くんが私の名前を呼んで催促する。
 私は少し照れながらも、ゆっくりと左の手首を孝之くんの前に差し出した。
「行くよ」
 その合図と一緒に、私の薬指にしっかりと入ってくる銀の指輪。ついさっきまで水月がしていたこともあって、ひやりとした冷たさを感じることはなかった。むしろ、少し温かい。これが水月のぬくもりなんだと思いながら、私は指の奥まで入る様子を見守り続けていた。
 指輪が奥まで入った瞬間に、強烈な光が私を襲った。
 驚いて、そのほうへ顔を向けると、いつの間にか平くんがカメラを構えているのが見えた。
 もしかして、さっきのを撮られたと思うと、恥ずかしさが急にこみ上げて来る。
 やがて、拍手が巻き起こった。平くんはカメラを構えているから、拍手をしたのは水月だろう。
 水月は悲しい表情を見せることもなく、ただ笑顔で拍手をしている。それは作り笑顔ではなく、心から私を祝福しているように私には見えていた。
「ありがとう、大切にするよ。水月」
 私は満面の笑みで、水月にそう言っていた。


「あの、水月……これ……」
 私はバッグから一冊の本を取り出した。これは、私が作った絵本「わすれられないなかま」である。
 まだ正式に書店に並んでいるような本じゃないけど、私が作った最初の絵本なので、どうしても水月に読んでもらいたかった。
 私がその絵本を渡すと、水月は絵本を見て表情を変えていた。
「ありがとう、遙。遙が私に会いたいって気持ちこの絵本から伝わってきたよ。もし、この絵本を読んでいなかったら、もしかしたら同窓会をしようなんて言わなかったと思う」
「えっ、それってどういうこと?」
 さっき水月が言っていたことは、まるで私の絵本を最初から読んでいるかのようだった。まだ大学にしか提出していない絵本なのに、どうして、水月が知っているのだろうか。
「涼宮、知らなかったのか? 涼宮の書いた絵本な、コンクールの最終選考に残ったんだよ」
「え?」
 水月の代わりに応えたのは平くんだった。
「最終選考に残った絵本は、幼稚園とかに置いて、直接読者の意見を参考にして選んでいるみたいなんだ。俺の働いている事務所も、子供が多いからさ、調査に協力してくれって要請が来たんだよ」
「そう……」
 そういえば、今日の同窓会を持ちかけたのは水月である。私の知らないところで、水月は私の絵本を読んでくれて、それが再会につながった。そう考えると私の想いが水月に伝わったんだと思って、嬉しい想いがこみ上げてきた。
「遙、頑張ってね。遙なら入選できるよ。絵本作家になれること、応援しているから」
「水月……ありがとう」
 私は涙が出そうになるのをぐっと堪えていた。
「水月、俺も言いたいことがあるんだ」
 背後から孝之くんの声が聞こえてきた。
「水月と一緒にいた頃、使っていたマグカップがあるだろ。あれ、実はもう二つ足したんだよ。俺たち四人は仲間だという証として」
「孝之……」
 水月は、そのことを聞いてひどく驚いていた。
「だからさ水月、今日だけ同窓会なんて言わないで、俺たちがいるこの町まで帰ってこいよ。四つのマグカップを使って一緒に飲める日を楽しみにしてるんだからさ」
「うん、ありがとう。孝之」
 水月はそれ以上何も言わずに黙ったままだった。顔を手で抑えていたように見えたから、もしかしたら涙を堪えようとしていたのかもしれない。
「それじゃあさ、またあのときみたいに写真を撮らないか。俺たち四人の再会を祝して」
 今度は平くんが声をかけてきた。手にはカメラを持っている。
「それじゃ、今日は再会記念日だね」
「再会記念日?」
 オウム返しに水月がつぶやいていた。
「うん、水月が今日を選んだのは、仲間記念日だからでしょ? だから、今日は仲間記念日でもあって、再会記念日でもあるんだよ」
「仲間記念日か、なつかしいな、その響き」
「そうだね」
「あのときは、新しいスタートの日だって言ってたけど、今日は新しい再スタートの日だな」
 三人それぞれの言葉がどれも私にとってはなつかしいものだ。まるで、この空間だけが五年前のあの頃に戻っているようにも思えてきた。
「それじゃ、孝之は涼宮の隣、そしてその隣は速瀬で、その隣が俺でいいよな」
 カメラをいじりながら、そう提案する平くん。
 私はそれでいいと思っていた。私の隣には大好きな孝之くん、そして水月がいる。
 五年前とは違う道をそれぞれ歩いているけど、私たちは四人でひとつの存在であることには変わりはない。
「よし、セルフタイマー押したからな」
 そう、私たちはいつまでも仲間だ。


「え? 入選したんですか?」
 長かった大学の夏休みも終わり、後期の講義が始まった頃、私がコンクールに出した絵本が入選したという知らせを受けた。
 私はそのことを確めに文学部の教授の研究室に行った。
「特に、吉田有紀氏が絶賛してたよ。彼女はここの卒業生でね。プロの絵本作家でもあるんだ。ぜひとも出版したいと申し出てたよ」
 私は喜びで胸がいっぱいだった。まさか、最初に書いた作品がプロの絵本作家に認めてもらえるなんて思ってもみなかったからだ。
「まぁ、出版するかどうかは、吉田氏とじっくり相談して決めていけばいい。賞の授与式は再来週だから出席するように」
「はい、ありがとうございます」
 私は深々と頭を下げた。
 これでまた一歩夢へと近づくことができた。賞を受賞したことはこれからの自信にもつながる。
 子供たちが私の絵本を読んで、そこから私の想いなんかを感じ取って欲しい。
 そういう絵本をこれからも書いて行きたいと思っている。
「あの……」
「ん、何かね?」
 私は、ダメ元で教授に無理なお願いをしようと考えていた。
「あの絵本なんですが追加したいことがあるので、改稿しても大丈夫ですか?」
 教授は最初驚いていたが、すぐに表情を元に戻した。
「ああ、別に構わんけど、私としてはあのままのラストのほうが余韻が残ってていいと思うんだが。改稿するんだったら、吉田氏にも連絡したほうがいいと思うよ」
「はい、ありがとうございます」
 ダメ元で言ってみてよかった。
 私はすぐに家に帰ると、絵本の改稿に取り掛かることにした。
 そして、一週間後にエピソードを追加した改稿版の絵本は完成した。


 その日、私は孝之くんの部屋に来ていた。
 いつものように、孝之くんの家に来て、夕食を作り終えると話を切り出す。
「あのね、孝之くん。絵本が出来たんだけど、また読んでくれるかな?」
 あの丘での再会から、私たち四人はまたいつもの生活へと戻っていった。
 平くんは仕事を任されるようになって、これまでよりずっと忙しくなったと言っていたし、水月は体育教師の夢を叶えるために大学受験を始めたみたいである。昼は仕事で、夜は勉強の毎日だというメールが来ていた。
 そんなこともあって、五年前とは違って、みんなそれぞれの仕事があるから、いつも会うということは無理みたい。
 でも、お互いの携帯番号やメルアドは交換しているから、また同窓会をしたくなったら誰かが連絡を入れてくるだろう。
 離れていても、私たちは仲間であることに違いはない。
「これ……作者の名前を変えたのか」
 絵本を手に取った孝之くんが最初に言ったのは、私が予測していたことだった。
 この「むらかみはるか」という名前は、四人の名前から一字を取って並べ替えたもの。でも、水月だけはいないということで、無という字を使った。
「だって、水月にはもう会えたんだから、無のままにしておくのはかわいそうだと思って」
 そう、この本はもしかしたら書店に並ぶ可能性もあるのだ。そのときに無のままだったら、水月に申し訳ない気持ちが出てしまう。
 だから作者の名前は無ではなく、無とは反対の有という字を当てて「むらかみはるか」から「あらかみはるか」へと変えることにしたのだ。
 もう水月はいないのではなく、私たちとはいつでも会えるのだから、そのイメージに合うように名前を変えてみた。
 そして、絵本の最終ページには、彼岸花の押し花を挟んでいる。
 これは、再会したあの丘で、隅でひっそりと咲いていたのを見つけた物である。私はそれを持ち帰って押し花にすることにした。
 彼岸花の花言葉は「再会」
 花のイメージと合わないかもしれないけど、再会の記念のようなものである。
 同じ記念といえば、孝之くんの机にある写真立てには、この前取った写真が飾ってある。一緒に孝之くんが私に指輪をつけてくれた写真もあった。
 もちろんその指輪は、私の左手の薬指で今も銀色に光り輝いている。
 私はその指輪に手を沿えながら、孝之くんが絵本を読む様子を見つめていた。
 水月、私は今、夢に向かって頑張っているから、水月も体育教師になる夢、頑張ってね。


 よいしょ、よいしょ、よいしょ。
 おこじょのハルは、きょうもいっしょうけんめいちいさいからだで、おおきなおかをのぼります。
 よいしょ、よいしょ、よいしょ。


 ハルはおかのてっぺんにつきました。
 てっぺんには、おおきなきがたっていました。
 おおきなきのちかくには、さんにんのおこじょがいました。
 おこじょのナッツとアキとフユユです。
 さんにんのおこじょはハルとはとてもなかがよくて、いつもまいにちあそんでいました。


 きょうもまたいっしょにあそぼう。
 つかれたら このきのしたでいっしょにおひるねしよう。
 ハルは、さんにんのおこじょとあそんだり、きのしたでおひるねをするのがとてもだいすきでした。


 あるひ、よにんはおおきなきになっているきのみをみつけました。
「あれれれ、きのみがなってるよ」
 ハルがいいました。
 よにんは、いつもまいにちあそんでいるので、とてもおなかがすいていました。


「わたしがとってくるよ」
 きのぼりがとくいなナッツがそういって、きのみをとってきました。


「どうしよう、これ?」
「なかよくよんとうぶんしようよ」
「おいしそうだね」
 ハルたちさんにんがそれぞれいいました。
 でも、ナッツだけはちがっていました。


「だめだよ。これはだいじにとっておくんだ」
 ナッツはきのみをだいじそうにかかえていいました。
「これはたねとしてとっておくんだ。これをつちにうえたら、もっとたくさんみがなって、みんなおなかいっぱいたべられるよ」


「ぼく、いますぐきのみをたべたいよ」
「おいしそうだよ。ぼくもたべたい」
「わたしも」
「だめだよ、これはたべちゃだめだよ」
 ナッツとハルたちのあいだでは、いけんがちがっていました。


「もうしらない! かってにすればいいじゃない!」
 ひとりだけいけんがちがっていた ナッツはおこってしまいました。
 たいへんだ。
 ナッツがおこってしまちゃった。
 ナッツはきのみをおいて、おかをくだってしまいました。


 ハルたちは、あわててナッツをおいかけましたが、もうナッツのすがたはどこにもありませんでした。
 そのばには、ナッツがおいていったきのみだけがのこされていました。


「どうしよう」
 ハルたちはこまりはてました。
 けっきょく、きのみをたべることができずに、ハルたちはかえることにしました。


 おうちにかえったハルは、ナッツのことばかりをかんがえていました。
「ナッツにあいたい、ナッツにあいたいよ」
 ハルはなきながらいいました。
「おこっているんだったら、ごめんなさいってあやまろう。そうしたら、ナッツもきっと戻ってきてくれる」


 よいしょ、よいしょ、よいしょ。
 おこじょのハルはしんじています。
 アキもフユユもしんじています。
 いつかかならずナッツがこのおかにかえってくることを。
 またよにんでなかよくあそんでおひるねすることを。
 ナッツは大切なともだち。
 わすれらないなかまなのです。


 よいしょ、よいしょ、よいしょ。
 おこじょのハルはきょうもいっしょうけんめいちいさいからだで、おおきなおかをのぼります。
 よいしょ、よいしょ、よいしょ。


 ハルがおかのてっぺんについたとき、おおきなちのちかくにひとりのおこじょがいるのにきづきました。
 ハルにはそれがだれなのかすぐにわかりました。
「ナッツ」
 ナッツがこのおかにかえってきてくれたのです。
 ハルはなみだをながしてよろこびました。
 やがて、アキもフユユもおかのてっぺんにやってきました。

 ちかくには、ナッツがおいていったおおきなきのみがありました。
 きのみはいくつもわれていて、なかからたくさんのたねがみえていました。
「そうだ、こうしよう」
 ナッツは、そのたねをみていいました。
「みんなひとつずつたねをとって、そこにうめよう。それをなかまのきとなづけよう」


 よいしょ、よいしょ、よいしょ。
 おこじょのハルは、おかにいくのがとてもたのしみになりました。
「まだかな、まだかな」
 みんなでうえたきのたね。
 いつめがでてきて、おおきなきになるのか、とてもたのしみでした。


 そして、おかのてっぺんには、アキとフユユ、そしてナッツがいます。
 ナッツは、いつもとおなじようになかよくあそんで、いっしょにおひるねします。


 おこじょのハルはしんじています。
 いつかみんなでいっしょにうめたたねが、めをだしておおきなきになることを。
 よんほんのおおきなきが、なかまのきとして、これからもハルたちをあたたかくみまもっていてくれることを。
 このおおきなきがあるかぎり、ハルたちはけんかをすることもなく、ずっといっしょにあそんでいけることでしょう。
 このよんほんのきは、ハルたちがたいせつななかまだということをあらわしているのです。


―「いつか再会できる日を信じて……」 終―


よろしければ、感想掲示板、または、SS人気投票にご参加ください。
人気投票、Web拍手では、一言感想を書くことができます。


あとがき

 遙聖誕祭ということで、久しぶりに書いてみることにしました。
 今回は原点に帰って、遙エンド後からあの四人の写真になるまでのエピソードということで、構成しています。
 最初は、水月が遙の読んだ絵本を読んで、再会するというのを考えていましたが、最終的にこのようにしました。

 あと、「マヤウルのおくりもの」の作者、アン・マーガレット・ソウヤーのことがありますが、
 これはアージュの公式見解ではありませんので、その辺りはご了承をお願いします。

 今回考えたテーマは、遙が「ほんとうのたからもの」を書くのは、水月エンドのときだけで、遙エンドのときには、遙は
 どんな絵本を作っているのだろうというところから、今回のSSになりました。
 結果的に、遙だったら水月に会いたい想いを絵本にするだろうと考え、「ほんとうのたからもの」の設定を一部借りて、
 全く違う絵本にしてみました。
 そのため、読んでいる途中で「あれ?」と思った方がいるかもしれません。

 最後にtakaさん、キリリクのイラストありがとうございます。
 最初は、遙が水月に会いたいよと孝之に泣きついているイラストとかも含めていましたが、最終的にあのイラストになってよかったと思っています。

   今回、これを書くときに、君望の小説を読んだり、プレイ日記を読んだりして、仲間記念日とかイルカとタコのマグカップの謎とか、
 遙エンドの水月と孝之の行動とか、多くのことを忘れていたので、久しぶりにそれを思い出しながら書いていました。
   ちなみに、再会という意味の花言葉になる彼岸花とかさねかずらとかも調べたのですが、さねかずらは知らない人が多いと思ったので、
 彼岸花を出しましたが、少し無理矢理すぎたと思っています。
 むらかみはるかも、最後で名前を変えてしまいましたし、あれでよかったのか不安なところがあります。

 それでも、いい聖誕祭になればいいと思っていますので、これを読んで感想やWeb拍手を頂ければ幸いです。
 次回は水月聖誕祭までSSは書きませんので、そのときになるまでお別れです。
 それでは。



SS一覧に戻る    君望TOPに戻る    TOPに戻る